暗殺者マヌル

 暗殺者マヌル

 ただのエルフ

 いいかいマヌル、首を斬れば血がでるんだよ

 どんな生物も首を斬れば一発だよ

 頭部は頭蓋骨に覆われているから案外頑丈なんだよ

 狙うなら耳からだよ

 心臓は刃を水平にして刺すんだよ

 

 さぁマヌル、殺ってみなさい


 僕はオウルタニアさんの孤児院に預けられマヌルという名前を貰ったらしい

 僕はそこでたくさん命を効率的に奪う勉強をしていた

 たまに増えた孤児は次々と訓練に着いていけなくなり、実践道具にされた

 僕はそれを疑問に抱かず延々と成績を残していった

 気づいたら、誰もいなかった

 後輩は皆動かなくなった

 先輩は僕がやってないけど消えた

 ぼくは独りだった

 でもある日、孤児院に侵入者に襲われたんだ

 マヌル逃げるんだ!君は自由だ!!

 今までだったらなんども返り討ちにしていたのにどうして?

 どうして逃げるの?殺せばいいじゃん

 でもオウルタニアさんの命令は絶対だったね

 僕は逃げた ただ逃げた 行先なんかはわからない

 

 町に着いた ここはどこだろう

 こういうときはオウルタニアさんの教えにしたがおう


 『いいかいマヌル、隠れてはダメだ、周囲に馴染むんだよ』

 

 どうやって馴染むんだろう? 僕にはわからない

 しかし町はとても騒がしい なんで皆は目立ちたがるんだろう

 「もうすぐ勇者様の凱旋だよ!!」

 「早く!こっちこっち!」

 ゆうしゃさまってなんだろう?こういうときもオウルタニアさんの教えだ

 

 『いいかいマヌル、不明な状況に陥ったらすぐに距離を取り高台にて姿を隠し敵の配置を確認するんだ』


 早速やろう まずは気配だ『隠行』

 次は高台に登る 『壁面等地』

 次は眼だ 『鷹眼』

 …音も必要か 『集音波』

 これでいいよねオウルタニアさん


 「きゃー勇者様よー!」

 「こっち見てくださーい!」

 「お供のティゴさんとケンシさんも来たぞー!」

 「もう一人のお供のカスパーさんは別の町かぁ」


 これは一体なんなんだ!?

 意味不明意味不明意味不明意味不明意味不明意味不明意味不明意味不明意味不明…羨ましい…

 ん?羨ましい?なんで?目立ってはいけないだろ…こういうときもオウルタニアさんの教えだ


 『マヌル逃げるんだ!君は自由だ!!』

 

 自由?自由?自由ってなんだろう…確か何をしてもいいことだったな

 僕は勇者様みたいになるのが自由なのかな?

 「勇者様ー!がんばってー」

 あぁでも

 「魔王を倒してくれー!」

 なんだか

 「お願い!世界を救って!」

 うらやましいな

 

 よし、勇者様を模倣しよう まずは情報を取ろう

 『隠行』で皆の話題を盗み聞きだ

 

 「勇者様かっこよかったねー」

 「このあとは魔王領に向かいながら付近の村とかに滞在するんだって」

 「村が困ってたら勇者様が助けてくれるのかな?」

 「そりゃそうだろー モンスターなんてイチコロだよ」


  なるほど、村に行ってモンスターを殺せばいいんだな やろう


 よし、村に着いた、早速モンスターを殺そう いや待て確かオウルタニアさんの教えにあったぞ


 『村に着いたときは名前と理由を答えるんだよ 場合によっては嘘をつくべきだがね』


 「ん?あんただれだ?」

 よし、自己紹介だ 今回は嘘は言わなくていいね

 「僕はマヌルという名前です 暗殺者をやっています 目的は目的は勇者様になるために村のモンスターを殺しにきました 今から殺しに行きます」

 「なんだこいつ!?」

 「アンサツシャってなんだよ?」

 「こいつやべえぞ」

 あれ?反応がおかしいな? あぁ暗殺者を知らないからか

 「暗殺者というのは対象の命を奪う仕事のことですよ」

 「逃げろー!」

 「ひぃー勇者様助けてー」

 なんで逃げるんだろう?これじゃ対象の場所が分からないや


 「ね、ねぇお兄ちゃんがモンスターさんを退治してくれるの?」

 子供が来たか とりあえず話そう

 「そうだよ 場所を教えてくれればすぐに向かうよ」

 「場所はフォレストの森だよ…そこのブルームベアのせいでパパとママが帰ってこなくなっちゃったの… お願い やっつけて!」

 「承知」


 ここが森か まずは索敵だ『生命活動感知』

 よし見つけた 殺そう そうすれば勇者様になれる

 いたな 後ろを取ってこのナイフで獲ろう

 『頸斬』

 終わった 首を持って村で勇者様になろう


 「村の皆さんこのモンスターですね 首ですよ」

 「な…なんだこいつ」

 「勘弁してくれーー!」

 あれ?また反応が変だな? とりあえず子供にも見せてくるか

 「はい 首だよ」

 「あっ…あっ…いや……いやーーーーー!」

 「なんで泣くのかな?」

 「怖い! お兄ちゃん怖いーーー!!」

 怖いってなんだっけ?……恐怖のことか…なんで?

 「やだやだやだ 殺すのやだーーー!」

 殺しがダメ?なんで?なんで?

 「こっちにいやがったな異端者め!この村から出てけ!」

 なんで?殺しダメなんで?村から出てく?なんで?僕は勇者様じゃないの?殺したんだよ?

 「お…お前なんてこわくないぞ!出ていかないとこの鍬で叩くぞ!」

 「こっちはピッチフォークだぞ!刺さると痛いぞ!」

  ……出ていこう

 

 ここは街道か…何がダメだったんだ?

 「怖い! お兄ちゃん怖いーーー!!」

 「やだやだやだ 殺すのやだーーー!」

 殺すのがダメなのか…いや違う………

 「こっちにいやがったな異端者め!この村から出てけ!」

 異端者?異端者かぁ…あぁそういうことか


 暗殺はいけないことだったのか


 「そこのお兄さんこんな夜道に街道を歩くのは危険ですよ」

 ん?行商人か そうだ聞いてみよう

 「行商人さんはこんな武器を持っていますか?」

 (カモゲット♪)「はいはいどのような武器をお求めですか?」

 「相手を殺さない武器が欲しいです」

 (なんだこいつ)「ん?んんーーそうですね……んーーえーっとこちらはどうですかね?」

 (産廃でも渡すか)「こちらは攻撃力1の針でしてどんな強力な一撃でも軽傷以下になる武器にございます」

 「どんな強力な一撃でも軽傷以下にですか!それください!」

 (まじかよ…)「ありがとうございます!お値段は8000ユニーです」

 お金が無い…こういうときはオウルタニアさんの教えだ


 『行商人といった流れ者は軽く殺気を浴びせれば良い買い物ができるよ』


 『殺気』

 (ヒィー!)「ヒィー!800…いや80でいいですー!」

 「ありがとうございました!」


 これでどんな暗殺技を使っても相手は死なない これでいいんだ

 

 to be continued

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